出版物のご紹介


思い込みを捨てれば、10倍売れる

カリスマバイヤーが教える「本当のお客様心理」の読み方

サッカー日本代表戦の日に売れるキャンペーンは?売上が10倍変わるPOPには何が書いてある?データが教えてくれた「さんま」の意外な併売商品。ちょっとした“気づき”が売り場を変える。

定価 

 1,512円(税込)

発行   日本実業出版社
形態   単行本
発売日   2013年1月16日


<著者コメント>

2011年3月に起きた東日本大震災は多くの方の尊い生命を奪い、多くの方の人生を変えましたが、遠く離れた関西に住む私の人生にも大きな影響を与えました。

 命を奪われた方や被害を受けられた方のご家族やご友人に対する深い悲しみと共に、「世の中何が起こるか分からない」「自分は今まで何をし、何を残してきたのだろうか?」「自分が出来る役割は何なんだろうか?」と、自分の人生について改めて考えたのです。

 私の人生を振り返ってみると、大学を卒業し小売業に入社してからは上司や先輩、同僚にも恵まれ、しかも自由に好きなことが出来る恵まれた社風の中で本当に充実した楽しく、しかも遣り甲斐のある小売業生活を送ってきました。しかし、時代の変化とともに『モノ余り』の時代に突入してからは、今日明日の売上づくりに追われ、その使命や責任、なによりも小売業の楽しさを感じながら仕事をしている小売業の人間が少なくなっていることが気になって仕方なかったのです。それはなにも小売業に従事している人だけでなく、メーカーや卸の人々さえその活気が失われつつあることに危惧を感じていたのです。

 そこで小売業でお世話になった33年間の自分の経験を基に、小売業の素晴らしさや楽しさ、やりがいを再認識し、今小売業で働いている方やこれから小売りの道に進もうとしている方の為に自信と勇気、なにより明日から頑張ろう!と元気の出る本を書こうと思ったのです。同様に小売業に商品を供給しているメーカーや卸の方には「小売業の人間は本当はこんな事を考えているんですよ」「こんな商品開発、こんな営業活動を期待しているのですよ」という事を本にしようと思い、33年間お世話になったイズミヤ株式会社を退社し、この本が出来上がりました。

 私がそもそも小売業で仕事がしたいと思ったキッカケは、京都の山科辺りを車で運転中に西友の前で見た光景がとても印象深かった事から始まります。2月の寒い朝でしたが西友の店頭にバレンタインデーのチョコレートとポインセチアの鉢植えや花束、メッセージカードを販売の為に準備する光景を目撃したのです。当時はまだまだバレンタインデーというのは一般的ではなく本当に好きな人だけにチョコレートを贈るという若者(特に中高生向け)の儀式だったのです。それを西友ではチョコレートを販売するだけでなく、花束やメッセージカードまで提供していたのです。しかも私のイメージではスーパーに買物に来るのは圧倒的に主婦層が多いハズなのにそこで販売することにより、若者向けの儀式を主婦層にまで取り込み、一般的な儀式に波及させ、ビジネスを拡大させるとともに、お客様の各家庭に笑顔を送り込んでいるように感じたのです。その時私は「小売業というのはモノを売るだけでなく、文化まで売るんだ!なんて素晴らしい仕事なんだ!」と感じたことがキッカケだったのです。

 そんな想いを抱いて入った小売業は想像以上にエキサイティングなものでした。今のようにマニュアルやオペレーションが整備されていなかったこともあり、「売る」為の行為はなんでも自由にさせてもらえ、又その結果が即座に出てくるという刺激に満ち溢れたものでした。毎日毎日が新鮮で本当にワクワクするものだったのです。

 そんな経験を積み重ね今でも通用する多くの成功事例を残してきました。それと共に数々の失敗と反省も重ねてきました。その実体験を本文でご紹介し、今後の商売のヒントにしてもらいたいと思っています。

 私が今小売業で特に必要な考え方は「思い込み」を捨てる考え方だと思います。過去の成功体験や業界常識にとらわれすぎている事が今の閉塞感を生んでいると思うのです。「こうあるべき」「これが常識だった」「このやり方でないとダメ」というような思い込みが自らの首を絞めていると思うのです。

 例えば高齢者対策です。今後のマーケットの中心を占める高齢者にどの企業も重点を置いた取り組みを実施しようとしていますが、そのターゲットとなる高齢者とは頭で考える高齢者とは似ても似つかないライフスタイルを送っています。高齢者という言葉が「思い込み」を増長させるのでしょう。お買い物に来ていただける60~80歳の方を対象とするなら「シニア」や「アダルト」と呼び名を変えた方が「思い込み」は少なくなるかもしれません。彼らはとてもオシャレで元気でヤングマインドなのです。都会のオール電化のマンションでパソコンを自由に操り、健康の為のウオーキングを欠かさず、外出の際には娘の服を借りていくような「高齢者」なのです。そんな人たちが便利で頼りになるような品揃えや売場づくりが出来ているのでしょうか?「高齢者」は魚好き、や「高齢者」は地味な服しか着ない、といった「思い込み」が新しい需要の創出を阻んでいるように思えてならないのです。

 本書では「PBとは経済性に優れたものでなければならない」という「思い込み」を捨て成功したプリンの商品開発事例や「大衆が喜ぶクリスマスケーキはこんなもの」という「思い込み」を捨て数年で10倍の売り上げを作ったクリスマスケーキの販売事例など自分が実体験した成功事例と共に、自分自身が「思い込み」で失敗した実例を赤裸々に書いています。そのどれもが自身で実体験した事柄であり、33年間小売業に携わった経験からくるものばかりです。

 そしてその「思い込みを捨てれば10倍売れる」考え方の根底にあるのは、「本当のお客様心理の読み方」にあります。どの小売業やメーカー、卸の人間でも「生活者視点」や「お客様重視」を考えて仕事をしているハズですが、そこに少しのズレが生じてきているのです。その少しのズレが結果として大きなギャップを生み、今の売上の低迷につながっていると思うのです。お客様には難しい「理論」や「理屈」は必要ないのです。本当にお客様が感じておられる「ちょっと不満」や「少しの違和感」を解消してあげるだけでお客様にとって「頼りになるお店」「私のお店」「お気に入りの一品」に生まれ変わると思うのです。

 私はこの本を小売業に従事している人やこれから小売業に進む人ばかりでなく、お客様に喜んでもらえる商品づくりをしているメーカー、それを小売業との橋渡しをする卸の方々、又美味しいモノづくりを真面目に行っている生産者の方々にも読んでいただきたいと思っています。

 そして今までの考え方をちょっとだけ変える事で、「本当にお客様に喜んでいただけるお店、売場、商品」を是非とも作り上げていって欲しいのです。

私達の仕事の向こうには、そのことを心から喜んでくださるお客様の笑顔と暖かい家族や心休まる家庭があるのです。その人々が「ほんとうに豊かな食生活」を送っていただけるお手伝いをみんなでしたいと心から願っているのです。

そんな大きな志を持った小売業の方、メーカー、卸の方に少しでもお役に立てれば幸いだと思っています。